競輪の代謝とは？対象となる選手の条件や引退後の措置・過去代謝した選手をご紹介！

競輪予想サイト解体新書の検証担当「近藤 宗康」です。

今回は競輪の代謝について紹介します。

競輪選手は他のスポーツ同様に、パフォーマンスを向上あるいは維持し続けるために日々激しいトレーニングと向き合っています。

そんな競輪界でも、最終的には引退という壁が待ち受けていることは競輪ファンにとって悲しいことでしょう。

特に代謝による引退は、選手としても避けたい制度であることに間違いありません。

今回は、そんな競輪の代謝について徹底解説！

代謝となる条件から直近で代謝となった選手・新しくできた代謝に関する制度など幅広く紹介していきます。

代謝をご存知の方でも有益な内容になっているので、ぜひ最後までご覧ください。

代謝とは？

競輪で初めて「代謝」という言葉を見る方からすれば、イメージしづらい用語かもしれません。

代謝とは、一定期間内での成績が基準を下回る選手の登録を消除し、強制的に引退させる制度です。

無慈悲な制度と思われるかもしれませんが、この制度があることで選手の能力を一定ライン以上に保つことができています。

また、実力が明らかに劣っている選手が毎回車券に絡まず、その選手が絡んだ車券が売れないといったことを避ける目的もあるでしょう。

事実上クビになることである代謝ですが、競輪の質を落とさないために欠かせない制度であることは間違いありません。

A級3班の男子選手が代謝候補となる3つの条件

代謝となる審査は、1年に2回(前期、後期)に分けて行われます。

前期	1～6月
後期	7～12月

これは、選手の来季級班を決める定期昇級と同じ仕組みです。

この期間で算出された競走得点が一定基準に満たなかった場合、代謝対象に。

男子競輪においては、A級3班の選手にこの代謝が適用されます。

実際の代謝候補となる条件を以下3項目に分けました。

1. 2期連続で競走得点が70点未満
2. 3期通算で平均競走得点が70点を下回った選手
3. 3期の競走得点の平均下位30名が強制引退の対象となる

イメージしやすくするため、以下の表に沿って説明していきます。

選手	1期目の競走得点	2期の競走得点	3期の競走得点	平均競走得点
A	65	71	68	68
B	72	68	73	71
C	68	69	76	71
D	64	65	67	65.3

条件①「2期連続で競走得点が70点未満」で見ると、CとDが該当しています。

次に条件②「3期通算で平均競走得点が70点を下回った選手」に絞って確認すると、AとDが該当していることが分かるでしょう。

この時点で、AとCは条件①と②のどちらかしか満たしていないので、代謝対象外となります。

Bは1期のみ70点未満となっているので、その時点で代謝対象外となります。

Dにおいては、条件①と②両方を満たすので代謝対象となるわけです。

この後、Dは他の代謝対象選手達の中で3期の競走得点の平均下位30名に当てはまれば、代謝決定となります。

ガールズ選手の代謝条件

ガールズケイリンにも代謝制度が存在します。

しかし、ガールズケイリンにて代謝となる条件は男子競輪と異なっていることが特徴です。

実際の代謝候補となる条件を以下3項目に分けました。

1. 2期連続で競走得点が47点未満
2. 3期通算で平均競走得点が47点を下回った選手
3. 3期の競走得点の平均下位3名が強制引退の対象となる

競走得点を基準にしているという点では、男子競輪と考え方が同じです。

上記3つの条件を満たした時に、代謝対象として強制引退を余儀なくされます。

ガールズ選手は男子選手より人口が少ないので、それに伴って代謝条件の基準も異なるのでしょう。

ガールズケイリンも男子競輪同様に代謝が存在することを頭に入れておいてください。

代謝後に選手が取られる措置についてご紹介！

ここまで競輪選手が代謝候補となる条件について紹介してきました。

代謝は事実上のクビ宣告なので、該当選手は職を失うことに。

これらの選手たちの今後の人生は、どうなってしまうのでしょうか。

そこで、代謝となった選手が取られる措置について、以下2項目に分けました。

• 退職金が支給される
• 選手として復帰することはできない

それぞれ解説していきます。

退職金が支給される

競輪選手としての活動期間にもよりますが、代謝となった選手は引退という形で退職金が支給されます。

目安にはなりますが、20年以上活動した選手には約2,000万円もの退職金が支給されるのだとか。

この退職金は、車券の売上はもちろんのことですが、選手が現役時代に収めた費用からも捻出されているものです。

競輪では、レースごとに15,000円を「選手会」に収める必要があり、このうち7,500円が退職金に充てられます。

退職金の積み立てとイメージしていただけるとわかりやすいかもしれません。

しかし、この退職金は2017年から20％ほどカットになりました。

併せて選手年金制度も存在していましたが、2015年には支給停止となっています。

現在は解決しましたが、このことに不満をいだいた競輪選手が、新選手会(SS11)を設立し選手会に対抗する騒動にもなりました。

選手として復帰することはできない

一度代謝となった選手は、競輪選手として復帰することはできません。

これは、競輪運営団体であるJKAが競輪養成所候補生の募集要項にも記載されています。

ア．競輪選手として登録された者（消除者を含む）。

–KEIRIN.jpより引用-

つまり代謝により登録抹消となった選手が、一から競輪学校でやり直す資格が与えられないということです。

厳しいですが、代謝となった選手は競輪選手以外の仕事に就いて、生活を送る必要があります。

代謝前の最後のチャンス！2024年から開始した「再チャレンジ検定制度」とは？

競輪では、代謝が危ぶまれる選手に対して新しい制度を2024年から開始しました。

制度名は「再チャレンジ検定制度」となっており、応募資格を持つ対象者は限られています。

応募資格は、下記の通りです。

1. 「競輪に係る業務の方法に関する規程」第83条第１項第３号の規定に該当し、同規程第134条第１項第３号により選手出場あっせん保留となった者
2. 代謝の対象となった審査期間（３期）の間に発生した競走中等における落車負傷等（自らの失格となった行為による落車負傷等は除く）により、31日以上の治療日数を要すると診断された身体損傷を受けた者
3. 診断された治療日数の属する審査期の出走回数が、当該審査期の登録審査用得点算定最低出走回数に達しない者

簡潔にまとめると、競走中の怪我が原因で最低出走回数に達しない選手に対して、競走復帰できるチャンスを与える制度となります。

審査方法については、各選手が決められたタイム内で独走するという至ってシンプルなやり方です。

これを機に、全ての競輪選手が平等に代謝の判断がされると良いですね。

過去5年分の代謝・引退した選手を一覧でご紹介！

現在、競輪選手の総人口は2,300人ほどと言われています。

その中で、毎年60名前後が代謝宣告を受け、競輪界から去っているのが現状。

ここでは、2020年〜2024年で代謝・引退となった競輪選手を一覧形式で紹介していきます。

2024年に代謝・引退となった選手

※2024年10月時点

後期の登録消除者はまだ確定されていません。

ガールズケイリンで代謝となった猪子真実さんは、ガールズケイリン史上最高配当144万円車券の中心選手になったことで話題の選手です。

2023年に代謝・引退となった選手

2023年に代謝となった窓場加乃敏さんは、2024年時点で賞金ランキング10位の窓場千加頼選手と縁故関係にあります。

競輪選手として師弟関係でもあったので、窓場千加頼選手にとっても思いが込み上げてくるものもあったでしょう。

2022年に代謝・引退となった選手

2022年に代謝となった田中麻衣美さんは、ガールズケイリン1期生としてデビューした選手でした。

当時は元モデルという異色の経歴から注目を集めており、ガールズケイリンの知名度を高めた選手の一人でもあります。

2021年に代謝・引退となった選手

岩原紗也香さんは、2021年に代謝となりました。

引退後は、競輪レース実況アナウンサーとして再び競輪に携わる仕事をしているとのことです。

2020年に代謝・引退となった選手

競輪の代謝まとめ

今回は、競輪の代謝についてご紹介してきました。

いかがだったでしょうか。

まとめると以下の通りです。

• 競輪の代謝は強制的に選手を引退させる制度
• 代謝の審査は1年に2回に分けて行われる
• 代謝制度により競輪の競技レベルを一定以上に保っている
• 男子A級3班とガールズケイリン全選手が代謝対象となる
• 代謝した選手は復帰することができない
• 再チャレンジ検定制度により代謝を免れることもある

現在、競輪界のトップで活躍している選手もいずれ引退する時は訪れます。

自身で引き際を見極め自分から引退を選択する選手もいれば、諦めがつかないまま代謝となる選手など様々です。

競輪が競技であり続けるためにも、この代謝という制度は今後も続いていくでしょう。